キラは夢を見ていた。
知らない女の子と自分が楽しげに話をしている。
女の子はフワフワのピンクの髪を風になびかせながらにこりと笑って自分を呼んだ。
 
『キラさま』
 

そこでキラは夢から覚めた。
 
 
 

むくりと起きあがったキラはしばらくボーっとしていた。目が覚めきっていないようだ。
 
「夢……久しぶりに見た………」
 
ぽつりと呟く。
最近は戦争やらガンダムやらで疲労度が高かったため、夢など見ず熟睡していたのだ。
 
「誰だろう、あの子………」
 
まったく知らない子だったが、もしかしたらどこかで会ったことがあるかも。と思ったキラは懸命に記憶をたどった。
 
ぶつぶつ呟きながら。
 
すると突然キラに向かって枕が投げつけられた。
 
「わぷっ!!」
 
考え事をしていたキラはもろに顔面で受けてしまう。
枕がずるっと顔からすべり落ちる。不意打ちを受けたキラは隣のベッドの方に非難の目を向けた。
 
「何するんだよ、トール。」
 
枕を投げつけてきたのはキラの友達で、同室のトール・ケーニヒ。
キラの隣のベッドで寝ていたトールはいつの間にか起きていた。そして不機嫌そうな顔でキラを見ている。
 
「お前なぁ〜〜……。朝っぱらからうるせーんだよ!!」
「あ………」
 
キラは時計を見た。
まだいつもの起床時間より1時間も前だ。
キラは小声のつもりだったひとり言も意外と大きかったらしい。
朝の眠りの一時を妨害されたトールの怒りはもっともだな、と思ったキラは素直に謝った。
 
「ごめん」
 
素直に謝られたトールは怒りも萎えたようで一つ息をつく。
 
「んで?何をそんなに朝から考え込んでたんだ?」
「え?」
「え、じゃねーよ。お前は俺の眠りを妨害したんだ。それくらい教えろ」
「……わかったよ」
 
ピシリと言われ、キラは仕方なくトールに夢のことを話し出した。
 
 
 

「ふ−ん……会ったこともない子が夢にね〜〜」
 
キラの話を一通り聞いたトールは相槌をうち、ベッドから降りた。着替えるようだ。
キラはベッドに座ったままトールを見上げて言う。
 
「うん、そうなんだ。記憶をたどってみたけど……やっぱり知らない娘なんだよ」
 
はぁ−とため息をつくキラにトールはニヤっと笑った。
 
「お前って欲求不満なんじゃねーの?」
「なっ!?そんなわけないだろ!!」
 
真っ赤になって否定するキラ。 
そんなキラにトールは、笑いながら謝る。
 
「悪い、悪い。冗談だって。でも……」
「でも?」
「それって、予知夢なんじゃねーの?」
「予知夢?」
 
トールの言葉にキラは目をまたたかせる。
 
「うーん……お前が夢で見たって女の子にいつか会うっていう・・・予告?みたいなものじゃねーの?」
「………」
「ま、確証はないがな」
 
そう言ってべっと舌を出したトールは、軍服のベルトを閉め着替えを終えた。そしてそのまま部屋を出ようとする。
 
「トール?まだ朝ご飯じゃないんじゃ………」
「あぁ、ちょっとミリーの所に行ってくる」
「………行ってらっしゃい。」
 
手を軽く振りながら部屋を出たトールを見送り、キラは立ち上がって着替え始めた。               
 
「……予告………か。」
 
キラは夢の女の子を思い浮かべた。
少しぼやけてしまったが、やわらかそうなピンクの髪と優しい響きのすずやかな声はしっかり覚えている。
 
「歌とか……上手そうだな………」
 
あの声で歌っている少女を思い浮かべ、キラの頬が少し赤くなる。
 
「予告だったら……いいな」
 
キラはぽそりと呟く。
すると、部屋の外からトールが呼んでいるのが耳に入ってきた。
 
「おーい、キラー!朝メシ行くぞ――」
 
キラはその声で現実に戻ったようで、慌てて着替えをすます。
 
「おーい、キラ――?先行くぞ――?」
「ま、待って!今行く!!」
 
バタバタとキラは部屋を出る。
トールが外で待っていた。ミリアリアも一緒だ。         
 
「お待たせ。あ、ミリアリアおはよう」
「おはよう、キラ」
 
ミリアリアはにこりと笑った。
 
「さ、行こうぜ」
 
トールが食堂へ向かって歩き出す。
その後にキラとミリアリアがついていった。
 
 
 
3人で歩いているとミリアリアが思い出したように言い出した。
 
「そういえば今日も水が制限されるらしいわよ」
 
ミリアリアの言葉にトールは露骨にいやな顔をした。
 
「またかよー。ったく、水くらいまともに飲みたいぜ。な、キラ」
 
同意を求めるトールにキラは苦笑いを浮かべた。
 
「そうだね。………今日あたり何か頼まれそうだね、艦長さん達に………」
「………ありえるな」
 
二人して嫌そうな顔をするトールとキラの背中をミリアリアがバシリッと叩く。            
 
 「って!」
「いたっ!」
「ほら、さっさと行くわよ!とりあえず朝ご飯でしょっ!」
 
母親のようなミリアリアに二人は顔を見合わせ笑う。
3人は少し急ぎ足で食堂へと向かった。
 

キラの予知夢が実現するまであと数時間。
 

END
 
‐あとがき‐
 
四葉の初小説でした。
 
……穴があったら入りたい(恥)
これいつ書いたんだろ……多分2002年の10月くらいかなぁ。2年以上前;
当時私は義務教育を受けてましたね。わぁ、遠い過去。
 
読んでいただけたならおわかりでしょうが、これはキラがラクスをデブリの方で拾う前のお話です。
後にも先にもトールを書いたのはこれだけ(苦笑)
つーか「キラ様」時代が懐かしい……私、呼び捨てよりこっちのほうが実は好きかも(笑)
 
再up:04.12.11
 
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