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キラはぼーっとスクリーン越しの宇宙を眺めていた。
動かなくなったMSが何体か漂っている。
 
「また……殺した……」
 
生気のない声で呟く。
ついさっきまで、アークエンジェルは攻めてきたザフト軍と交戦していた。
キラもストライクと共に敵に立ち向かい、撃退した。
 
ふいに、オペレーターをやっているミリアリアから通信が入った。
 
「キラ、お疲れ様。敵は撤退したわ、帰還して」
「……了解」
 
返事をし、通信をきったキラはそっと手を頬へあてた。
 
「涙……でてないや。なれちゃった……のかな」
 
 
 
帰還したキラは疲れたから休むと言い、ストライクの整備もそこそこに自室へと引き上げた。
 
うつむきがちで部屋への通路を進んでいると、反対側からふわふわと進んでくるラクスに会った。
        
「まぁ、キラ様」
 
ラクスはキラに気づくと、ぱぁっと笑った。
 
「ラクス……また散歩?」
「はい。戦いは終わりましたのね。キラ様もご無事でなによりですわ」
 
微笑んでくるラクスにキラは薄く笑った。
そして申し訳なさそうに言う。
 
「ごめん、ラクス。僕疲れたからまた後で………」
「あ、はい……」
 
ラクスが頷くとキラは小さく笑い、去っていく。
その背を見送りながら、ラクスは瞳を揺らした。
 
「キラ様………」
 
 
 
部屋に入ったキラはそのままベッドに倒れこんだ。
枕に顔をうずくめる。
「……出てよ」
 
声が震える。
 
「出てくれよ………涙、なんで出ないんだよ。僕は本当になれちゃったのか?あれに………人殺しなんかに!」
  
キラは恐かった。
戦争になれていく自分が、人を殺して平気になっていく自分が。
 
「平気なんかじゃないん だ……。僕は……僕は………!」
 
上手く口が回らない。
枕を掴む手に力がこもる。
 
ふいに、そんなキラの震える手を、誰かがそっと握りしめた。
 
「……ラ、クス………?」
 
キラはベッドから体を起こし、そばに膝をついている人物の名を呼んだ。
ラクスは目を伏せ、キラの手を両手でつつみこんでいる。
 
「キラ様、申し訳ありません……。勝手にお部屋に入ってしまいました。でも私は……あなたをほうっておくことはできません………」
「……僕は大丈夫だよ?」
 
キラは口元を上げ、笑顔を作る。
そんなキラにラクスはふるふると首を振った。
 
「いいえ、大丈夫ではありませんわ……キラ様は今とても苦しんでらっしゃいます」
「どうして……?僕は平気な顔してるでしょう?」
 
自嘲を含んだ声でキラは言う。
またラクスは首を振る。
 
「いいえいいえ……キラ様は泣いてらっしゃるじゃありませんか」
「え……?」
 
泣いている?僕が?
 
戸惑うキラに、ラクスはぱっと顔をあげた。
目には涙がたまっている。
 
「あなたの心が泣いています……。辛いと……叫んでいます」
「………」
「キラ様……泣かな……いで、ください。私……わた……」
 

途切れ途切れの言葉。
ラクスはぽろぽろ涙をこぼしていく。
キラは呆然とその様を見ていた。
 
「どうして……ラクスが泣いてるの………?」
 
キラはそっとラクスの涙をぬぐう。
ラクスは上目遣いでキラを見ながら言った。
 
「キラ様が……心で泣いてしまうからですわ。だから私はキラ様のかわりに……」
「や、かわりって……」
「涙を流せば辛いことも流れます。でも……キラ様は心で泣いてしまわれます。だから私が涙をながしてキラ様の辛いことを流してるのです」
 
そんな、無茶苦茶なことを言うラクスにキラはしばらく開いた口がふさがらない状態だった。
が、ふいに吹き出し、大きく声を上げて笑い出した。
 
「……キラ様?」
 
突然大笑いし出したキラに今度はラクスが驚いている。
 
「……ご、ごめん。ラクスがあんまりおかしなこと言うから………」
 
こみ上げてくる笑いをこらえるキラに、ラクスはぷくっと頬を膨らました。  
 

「ひどいですわ、キラ様」
 
ぷりぷり怒るラクスにキラは苦笑いをした。
 
「ごめんね………うん、でもそうだ」
「え?」
「僕は心で泣いてたのかもね……。前は涙を流したのは……無理に戦ってたからだろうな。今は自分の意思でたたかってるから……。大切な人達を守りたい……君と、ラクスとずっと一緒にいたいから戦ってる。だから涙をだすことをしなかったのに………心は正直だね」
 
まいったよ……とキラは頬をかく。
 
「人を殺すのは戦争だからってやっぱり辛い……。でも僕はもう逃げないって決めたんだ……。戦うって………」
「キラ様はお優しいですから、これからもきっと心で泣かれてしまわれるのでしょうね……。でもそんな時は私におまかせ下さい。かわりに涙を流しますから」
 
胸を張って言うラクスにキラは首を振る。
 
「それは駄目」
「なぜですの?」
 
少しショックを受けてるラクスをキラはぎゅっと抱きしめた。
 
「キラ様?」
 
突然抱きしめられてラクスは目をしばたかせた。
 
「ラクスがかわりに泣くっていうのは駄目。だって………」
 
キラはラクスと顔を見合わせ、額をこつんとくっつけた。
 
「だって君に泣かれると辛いから。すごく……辛い……」   
「……はい」
 
ラクスは優しく微笑んだ。
キラも笑う。
そうして二人はしばらく笑いあっていた。
 
 
 
僕はこれからも戦争という名のもとに人を殺していってしまうだろう。
 

でも絶対に逃げない。
 
 
 
大丈夫、彼女と一緒なら――――――
 

END
 

‐あとがき‐
 
あぁもぅ、なんじゃこりゃ――!!
ツッコミどころの多さにびっくり。
ラクスはこんなキャラじゃないし。
これを書いたのは多分ラクスをアスランに返した話を見た後くらい、かな?
もしもラクスを返していなかったら……みたいな設定です。
 
まだキララクをどういったCPがわかっていなかった時期のですねー。(今もだけど)
めちゃくちゃなキララクです。
 
再up:04.12.12
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tears