キラはイライラしながら、目の前で会話している二人を見ていた。
楽しげに話す二人。それは、ラクスとアスランだ。
(僕がラクスと喋ってたのに………)
むくれながらキラは子供のようことを心中で呟く。
キラの言うとおり、少し前までラクスと話していたのはキラなのだ。忙しくて中々話す暇がなかったので、キラは他愛のない会話を楽しんでいたのだが、ふいにアスランがやってきてラクスと話し始めた。
話し始めのころは、キラも親友のアスランと笑って話していたが、内容がどんどんプラントの話へとうつっていき、キラは入り込めなくなっていった。
(大体、ラクスも酷いよ。アスランとばっかり話して………)
頬杖をついてキラはため息をつく。すると、ラクスの愛ロボ・ハロがキラに飛び込んできた。
「ハロ!キラ、キラ!」
キラはハロをキャッチすると仕方なさそうに返事をする。
「はいはい。お前、ラクスにかまってもらえなくて暇なのか?ハロ」
「ハロ!オマエモナ!」
「……うるさいよ」
会話機能のついてないはずのハロだが、たまに鋭いところをついてくる。
キラは肩にとまらせていたトリィをハロに差し出した。
「ほら。二人で遊んでおいでよ」
「ハロ!」
「トリィ!」
トリィがばさばさと飛び、ハロはぴょんぴょん跳ねながらキラ達から離れていった。
「遠くへ行くなよ!………ふぅ。ん?」
息をついて二人?を見送ったキラは、ふいに視線を感じた。
首を巡らせてみると、ラクス達がキラを見ている。
「キラ様は本当にお優しいのですね」
「へ?」
「いやいや、あれは同レベルなんですよ、ラクス」
「はい?」
微笑んでいるラクスと、意地の悪い笑みを浮かべるアスラン。それを見て、キラは二人がいつから自分を見ていたのか気づいた。
瞬時にキラの顔が赤く染まる。
ペットロボット達との会話というか、戯れというか、つまりはさっきのを見られていたのだ。
「あ、いや、さっきのは………」
「照れるなよ、キラくん。子供心を忘れないのは良いことだ。ですよね、ラクス」
「はい、とっても可愛らしかったですわ」
ラクスに満面の笑みで言われ、キラは撃沈した。
そして同時にぷっつんと何かが切れた。
「―――っもう、いいよ!」
がたんと立ち上がりキラは駆け出す。
「え?え?キラ様!?」
ラクスは目を丸くしてキラを呼んだが、あっという間に走っていってしまった。
「ど、どうされたのでしょう………?」
「まったく、いつまでも本当、子供だなー」
おかしそうに笑いながらアスランは呟いた。ラクスはきょとんとする。
「アスラン?」
「ラクス、早く追ってやってもらえますか?あいつ、ずっとイライラしてたみたいで、さっきので怒ったみたいです」
「え………えぇ、解りましたわ」
何故キラが怒ったのかラクスはよく解らなかったが、とりあえずキラの後を追うため部屋を出た。
その後姿を見送りながら、アスランはまた可笑しそうに笑う。
アスランはキラが自分達が喋っているのを見て不機嫌になっているのに気がついていた。気がついていて、ずっと喋り続けていたのだ。
アスランは笑いながら呟いた。
「あいつってやっぱり、からかいがいがあるな」
(なんだよ!ラクス達が悪いんじゃないか!僕だって好きでハロの相手をしてたわけじゃないのに………)
キラは走りながら心の中で文句を言っていた。
すると、後ろからラクスが追いかけてくるのに気がつく。
「い!?」
「キラ様ー」
たかたかと走るラクスに一瞬、速度を緩めたキラだが、思い直してまた全力疾走しだした。
怒っていたとしても、いつもなんだかんだでラクスに気を許してしまうキラは、今度こそと思い逃げる。
ラクスは懸命にキラを追いかけていた。
「キラさ………きゃっ!」
「!!」
小さな悲鳴と、どさっという音にキラは振り向く。
目には入ってきたのはラクスがうつぶせで倒れている姿だった。
「ラ、ラクス!」
キラは急いでラクスのもとへ行くと助け起こしてやる。
「だ、大丈夫!?こけたの?怪我は?」
わたわたとキラが慌てていると、ラクスがキラの服をきゅっと握った。
「え、ラクス?」
目を瞬くキラにラクスはにこっと笑う。
「キラ様、もう逃げれませんわよ?」
うふふと笑うラクスにキラは呆気にとられている。
「ラ、ラクス………」
「キラ様、どうして怒ってらっしゃいますの?私、何かいたしました?」
上目遣いのラクスにキラはうっと言葉に詰まった。
今更ながら、怒っていた理由がばかばかしく思えてきた。ラクスにはとても言えない。
「そ、それは………いや、そんなことより、怪我はないの?」
話題をそらそうとキラはラクスに尋ねた。
「はい、大丈夫で………っ!」
「どうしたの!?」
顔を苦痛に歪めたラクスにキラは慌てた。
「あ、足を………」
「………捻ったんだね。早く手当てしなきゃ!」
キラはラクスを抱えあげた。
「ごめんね……僕が逃げたりしたから………」
「そんな……いいんですよ。私が好きで追いかけたのですから」
そう笑って言うラクスに、キラは申し訳ないやら、嬉しいやらで、形容のしがたい笑みを浮かべた。
「さ、医務室に行こう」
「はい」
ラクスは嬉しそうに頷くと、キラの首に腕を回した。
そうしてキラはラクスを抱え、ラクスはキラに抱えられ、医務室の方へと向かっていった。
そんな二人の姿を陰から見ていた一対の視線があった。
その視線の主は、くすくすと忍び笑いをもらし、心中で呟く。
この二人にはケンカをするということが、やっぱり似合わないな――――
そう、アスランは思った。
END
‐あとがき‐
誰ですか、あなた。な、アスランさん。
こんなアスランは私の作品にはほとんどいません。
ぶっちゃけ、へたれてバカで間抜けなアスランが好きなんで。(ぇ)
こんな大人、つーかくさい奴知らない。
ありえない。
じゃぁ書くな載せるな、ということになりますが、どうしてもこのアスランを見せたかったんです……くっせー!って思わせたくて(爆)
再up:04.12.13
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