「ラクス、ごめんね。ちょっとだけ待っててくれる?」
「はい、かまいませんわ」
にっこりと笑って頷いたラクスにキラも顔をほころばす。
今、二人はキラの部屋でキラがやっともらえた休憩を過ごそうとしていたのだが、ついさっき申し訳なさ気なマリューから通信が入り、キラに新たな仕事が舞い込んできたのだ。
部屋にいても出来る事なので、キラはラクスに部屋で待っていてくれと頼んだ。そしてラクスから了解がもらえたので、慌てて机のパソコンへと向かった。
カタカタとキーボードを打つキラの指の動きの速度は、いつもの三割り増しだ。
せっかくのラクスとの休息を邪魔されたキラは、その怒りを仕事にぶつけて早く終わらせようと必死だった。
しかもラクスはキラのベッドでハロやトリィと戯れたり………してはいない。キラの邪魔にならないように極力物音を立てず大人しくしている。
そんな健気なラクスにキラはますます罪悪感がつのり、あせった。
「これと、あれと………あ!間違えた!……よし。それでこれを……あ!また!……うん、これで……あとは…………っできた!」
ぶつぶつ呟いて、ミスをして、なんとかキラの仕事は完了した。
椅子の背にもたれ、息をつく。
「ラクス、終わったよ………ってあれ?」
送信ボタンを押しマリューに送ると、キラは晴れ晴れとした顔でベッドの方へ体を向けた。
しかしそこで目に入ってきたのは、すやすやと眠るラクスの姿だった。
「……寝ちゃったのか」
はぁ、とため息をついてキラはしゃがみ込むと、ベッドに頬杖をついた。
じーっとラクスを見つめる。
「……可愛いな」
少し紅くなって呟くと、キラはラクスの頬にそっと手をやった。
白い雪のような肌に、ほんのりとした赤みがさしている頬は、撫でるとすべすべとしていて気持ちがいい。
「………ん」
と、ラクスが小さな声をもらしたので、キラは慌てて手を引っ込めようとする。
しかし、その手をラクスにがっちりと掴まれた。
「え?」
「キラぁ………」
「あ、ラクス起きた?」
とろんとした目のラクスにキラは微笑んだ。ラクスもふにゃっと笑う。
そして問題発言を一言。
「一緒にお昼寝いたしましょー」
「………は?」
キラは思考停止気味で目を瞬く。そんなキラを、ラクスは思い切り引っ張った。
「わ、ちょっ………!」
急に力を込められキラはバランスを崩し、ベッドへ倒れこむ。
「な、ラ、ラクス………!?」
混乱最高潮のキラは真っ赤な顔でラクスを見た。が、彼女はまた眠っている。
「………ね、寝ぼけですかラクスさん?」
ほっと安堵する反面、残念な気持ちもあった。
とりあえず、この状況はまずいと思いベッドから降りようとすると、ラクスにしっかりと腕をつかまれていた。
いや、つかまれているというよりは………
「枕は僕の腕なんですかラクスさん」
キラの腕に頭をのせ、快適さ三割り増し。といった感じのラクスにキラは脱力した。
あぁもぅ、とやけくそで自分もベッドに寝転がる。もちろん腕は微動だにさせない。
「……僕……大丈夫かな」
ふっと自嘲の笑いをキラはもらす。
心の中では、理性と欲望が激しい戦いを繰り広げていた。
キラの視線は天井だけに注がれている。
もしもうっかり横を見てしまえば、欲望がKO勝ちしてしまいそうだからだ。
しかし、耳元から伝わる寝息だけはどうすることもできず、心臓は超高速で走っている。
そんな風にキラが悶々としていると、ふいにラクスが小さな声で何かを言った。
「……ラ………」
「え?」
キラは聞き取ろうと、思わず視線をやってしまう。
ラクスは幸せそうに微笑んで再び口を動かした。
「……キラ………」
「!」
桜色の唇から紡がれた自分の名に、キラは目を見開く。
胸に暖かいものがあふれて、止まらない。
そして
理性だとか、欲望だとかそんなものは関係なく
本当に無意識の中
キラは、自分の腕の中で眠る姫君の唇に、ゆっくりと近づいていったのだった――――
END
‐あとがき‐
『fall
asleep』『幸せの感じ方』に続く[〜〜枕]三部作ここに完!!
なぁんて、嘘デス。
ただのネタがなかった為に、当時サイトによく来てくださってた方に、[抱き枕][膝枕]ときたら[腕枕]でしょう!と言われ、はい、それ採用!
という展開でできたのでした。(爆)
最後にやっとラクスが寝顔を公開。
ずっとキラばっか寝顔見られててそれじゃ私のもっとー攻めキラが実現しないわ!と思いキラにいい思いしてもらいました。(でも攻めキラではなぃ)
この作品のキラは理性が強かったのデスね。よく頑張りました。(なんじゃそら)
再up:04.12.16
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