雨の利用法。
しとしとと、雨が降る。
ガラスに跳ねる雨音に、ベッドで眠っていたキラは目を覚ました。
未だ回復しきらない体をゆっくりと起こし、ベッドから降りると、ガラスに手をついた。
「……雨か………」
あまり感情のこもらない口調でキラは呟いた。心の方も、まだ回復していない。
「………あれ?」
キラはきょろきょろと周りを見回した。
「……ラクス、さん……がいない………」
自分が目を覚ます頃にはいつもすぐ傍に姿があるのに、今は見当たらない。
「……用事か、何かかな………」
そう呟くと、キラは天を仰ぎ、深く息を吐いた。
小さく、口を動かす。
「……ラクス……さん………」
『ラクス、とお呼びください』
そう言われてもう何日もたつのに、キラはまださん≠つけずにはいられない。
「………なんか、照れくさいんだよね………」
ほんの少し頬に朱をのぼらせる。
きっと、アスランは普通に『ラクス』って呼べるんだろうな………
そんな風に思い、キラはうなだれる。しかしその反面、心の中に、何か黒いものが生まれてきた。
むくむくと、それは膨れてゆく。
「………なんだ?」
それの正体を見定められず、キラは悶々と考えていた。
すると
「あら?キラ、もう起きてましたの?」
ふいにかけられた声に、キラははっとする。慌てて笑みをつくり、声の主を振り返った。
「ラクスさ………ん!?」
ラクスの姿を目に映したとたん、キラは驚愕した。
「そ、そそその格好は!?」
わなわなと震える指先でキラが指したラクスの服は、いつものおとなしめのワンピースではない。
緑を基調にした色合いの、(キラ的には)露出度の高い服である。
思わず赤面するキラに、ラクスは目を瞬かせた。
「これですか?これは今度のコンサートで着る予定の服ですの。キラに見ていただきたくて着てまいりました」
「……コ、コンサート?」
「はい」
にっこり笑ってラクスは頷く。
キラは困惑する脳内で、つい先日知らされた事実を思い起こした。
この少女、ラクス・クラインはここプラントで歌姫と呼ばれており俗に言うアイドルらしい。
一度、アークエンジェルで彼女の歌を聴いたキラはすぐに納得したのだった。
「あぁ……そうか。もうすぐ、歌のコンサートを開くんだね。で、その衣装を着る、と」
「えぇ、そうなんです」
「ふーん………」
にしても、ちょっと肌を見せすぎなんじゃ…………
そう心で呟くキラは無意識に眉間にしわを寄せていた。
難しい顔をするキラに、ラクスは不安気な表情を浮かべる。
「………似合いませんか?」
「えっ!そ、そんなことないよ!すごく、似合ってる」
似合いすぎて困るんだけど。
この最後の一言は心の中に留め、キラは微笑んだ。
ラクスはほっとしたように笑う。
「よかった………どなたかにそう言っていただけると、安心します」
そう言って、嬉しそうに両手を合わせるラクスに、キラは一瞬時を止め、首を傾げた。
「え………毎回誰かに、見てもらってるの………?」
恐る恐る、といった表現が正しいのだろうか。
とにかくそう言った感じで尋ねたキラに、ラクスは何も気にすることなく、頷いた。
「あ、はい。いつもはアスランが見て下さるんです」
さらりと。本当にさらりとラクスが言ったことをキラはさらりと流すことが出来なかった。笑顔を固める。
「………アスラン?」
アスランが毎回こんな風にラクスのコンサート用衣装の試着を、見てた?
こんな………こんな、肌を見せまくる、衣装の試着を?
……………
プチッ
と、キラの中で何かが切れた。
纏う空気が、冷たくなる。
「キラ?」
様子の変わったキラの顔をラクスが覗き込んだその瞬間、キラの目が怪しく光った。
ぐいっとラクスの腕を引っ張りベッドに押し倒す。
「きゃっ」
突然ベッドに引っ張られ、ラクスは目をみひらいた。
「キ、キラ?どうしましたの?」
「………君って、なんでそう無防備なわけ?」
「え?」
いつもより数段トーンの低い声音のキラにラクスはきょとんとする。
「男にそんな格好見せて、平気だって思ってるの?」
「男性にって………やっぱり似合いませんの?」
「その逆。似合いすぎて駄目なの。というか肌見せすぎ」
淡々と、キラは言う。
そんな口調まで豹変したキラに、ラクスは背筋にぞくっとしたものが走った。
「で、ですがこれはコンサートの衣装ですし……これくらいは普通………」
「でもこの服、僕がいなくてアスランがいたらアスランに見せてたんだろう?」
男に、二人きりで。
そう、まるで今のように………
「そ、それは………」
冷ややかなキラの眼差しにラクスは返す言葉がなくなった。
ラクスが口をつぐむと、キラはにっと口の端を持ち上げ、笑う。
そうして、視線をガラスの方にずらしした。
「……この雨って、まだ大分降るよね?」
「え………」
「ここ、ガラス張りで外から丸見えだけど、雨が降ってると………」
「降ってると………?」
目を瞬くラクスに、キラはくすりと笑って言った。
「外から、見えにくいんだよ、ね………ラクス」
呼び捨てなど照れくさい、と言っていたキラはいずこへか消えている。
初めて呼び捨てにしてもらえたことを、ラクスは喜べなかった。
今のキラ、純真な真っ白少年が見事にひっくり返ったキラに、それどころではないかったからであった…………
その日、雨の降る時間が終わり再び晴れると、ガラス張りの部屋では、妙にすっきりした顔のキラと、真っ赤の顔でベッドに潜り込んでいるラクスが見れたとか見れなかったとか…………
END
-あとがき‐
終わり方がエロくさすぎだろっ!?
これ書いたとき確か私、中学生ですよ!?
やばいエロ中学生!!
というか話自体が変ですね。変。
文章も下手すぎ(汗)
恥ずかしすぎて顔から火が出ます。
でも好きだ、黒キラ!(結局そぅかよ……)
再up:05.1.4
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